身体の機能を維持するために重要な水分は人体では、血液やリンパ液、消化液などの状態で存在しています。体外への排出と体内への補給のバランスが取れていることが、生命維持の為に必要不可欠です。ところが発熱や下痢などで水分や塩分が過剰に排出されると脱水状態が引き起こされるのです。体液には呼吸で取り込んだ酸素や、体内に消化吸収された栄養素を身体中の細胞に運ぶ働きを持っていますが、脱水症ではこのメカニズムが十分機能していません。そのため軽度の脱水を放置しておくと、血管や心臓、脳などを正常に機能させるための必要な酸素や栄養素が行き渡らず、生命に関わる合併症につながることもあるのです。
脱水症は条件が整えばどの年代でも陥る可能性がありますが、高齢者では陥りやすい症状として注意が必要です。高齢者が脱水に陥りやすいのには、幾つかの原因があります。加齢に伴い新陳代謝が衰えると、生命活動も不活発になり食欲が減退したり、嚥下機能が弱体化するなど水分の摂取量が減少していきます。筋力の低下は、体液を蓄積する筋肉の減少につながるので一層の水分減少を招くわけです。加齢と共に内臓の働きが低下することも大きな要因です。腎機能が低下し十分な塩分排出機能が発揮できないと、塩分濃度を調整するのに支障をきたし体液バランスを崩すことになります。
また高齢者特有の事情として、のどの渇きに鈍感になる傾向が強まることも、関係するのです。とりわけ認知機能が低下すると、飲み物を飲んだ記憶自体忘れてしまっていることもあります。
このような高齢者には脱水に陥りやすい特徴を有しているので、看護にあたる場合には本人に先んじて十分な水分などを摂取しているのかを配慮する必要性があります。注意が必要なのは、糖尿病や服用している薬の薬理作用によっても脱水症状のリスクが高まる点にあるのです。高齢者に多い糖尿病では、余計な糖分を尿で排出しようとする生理作用が働くため、尿から排出される水分量が増えます。高齢者看護では、老化による気質的素因と糖尿病などの基礎疾患の存在の両面から、脱水症状対策に取り組むことが必要です。高齢者看護のイラスト

高齢者にこんな症状が見られたら、脱水症状のサイン

高齢者では脱水症状に陥っても、本人に自覚症状が無く、周囲で看護する人間が連携して兆候を見逃さないことが大切です。軽度から重度な状態まで、警戒すべきサインや特徴の知識を身につけておきましょう。軽度の状態では、皮膚の乾燥が見られます。高齢になると誰しも皮膚が乾燥するものですが、くちびるがかさついていたり、口の中がドライマウス状態になっているときは、脱水を疑う必要があります。年齢に関わらず湿り気を帯びている脇の下などをさわってみて乾燥しているときも注意しなければなりません。視覚的に調べるには、手の甲をつまんでみてもとに戻るのに時間がかかったり、爪を押してみて色が回復しないのも乾燥を示唆する所見です。
看護の際には表情の変化にもよく観察してください。ボーっと呆けていたり、うとうと眠っているような状態が継続しているのも、脱水の兆候の可能性があります。
脱水が中程度になると、頭痛や吐き気などの自覚症状を訴えるようになるのです。体内の水分量が減少するので汗や排尿も減少するようになります。これ以上に進行すると話しかけても反応が無い重度の意識障害や、けいれん発作なども見られるようになるので、重症化する前に適切な治療を行う必要があるのは確かです。
万が一、高齢者に脱水症状やその兆候が認められたら、応急措置として速やかに水分と電解質を補給する必要があります。水分を補給するだけでは電解質バランスが改善されず心機能への悪影響が懸念されるからです。水分と電解質補給の為に、薬局などで市販されている経口補水液を常備しておくのが対策になります。脱水症状が見られてから4時間以内に、経口保補液を体重1kgあたり30-50ミリリットルを服用させます。意識障害や痙攣等が見られるときは必ず医師の診察を受けて下さい。